四字熟語-江郎才尽 

こうろうさいじん

誰がそうだとはいいづらいが、テレビやマスコミに出づっぱりでいる人の中に「才人」ではなく「才尽」といってよい人を見かける。みずから顧みれば、ことばに冴えがなくなり行動に切れ味がないのだから本人が気づかないわけはない。

南朝の宋、斉、梁の三代に仕えた江淹は、若いころには精彩のある擬古詩を発表してもてはやされたが、高官にのぼるにつれて文思に冴えを失い、晩年になると文才を使い尽くしたかのようになり、「江郎才尽」といわれるようになった。
「才尽」といわれようとも三代に仕えた能力は並みでない。保身のために演じたのだとする見方もあるが、「才尽」の歴史的シンボルとされたのだから、実際それに近かったのだろう。

政権が目まぐるしく代わる時代、保身のために何度も面だけを革める「才尽」型の人物にこと欠かない。一方に芸能、工芸の分野には無形文化財保持者(人間国宝)に指定され、生涯輝きを失うことなく向上する姿を示す才人もいる。 

『梁書「江淹伝」』から

『日本と中国』連載「四字熟語ものがたり」より
堀内正範 ジャーナリスト